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Channel: 新・イメージの詩
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謎の人物①

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 「埼玉県の何処かにある」はずのフランス風レストラン“L'AGAPE(ラ・ガップ)”。何処にでもある西欧風の建物の内(なか)では、経営者をはじめ、スタッフ一同が大口を開けて、試作品の賄(まかない=昼食)である“酢とコド鯉にパスタ”を頬張っていた。
と、その瞬間(時)。営業時間でも開くことのない、開かずの扉が、カウベルの涼やかな音と伴に開かれた。
 
「あ…あなたは神を信じますくゥわあ~!」
「だ、誰だぁ?お前らはっ!?音楽活動もしないのにシンガー・ソング・ライターの肩書を振り回している、上から目線でしかものが言えない神戸の保育所長とブログでコメ喧嘩(けんか)したことのある副料理長(スー・シェフ)の木下(ワー)様、舐めてんのかぁああ?
「云うだけ番長のワーさんが壊れた装(ふ)りしてる…ッす
「リ、リーダー、それちがうでしょう!」
「ガッテンのマサ。ダメだ、兄貴、極度の緊張と腹痛で壊れてまんがね!」
「おい、おい、コミュ(平の給仕係り)。『ただ今、心を込めて準備中』の札、掛けるの忘れただろう?しょうがねェ~なァ~、ったく」
「総支配人の補佐役(メートル・ドテル)の賀真(がま)ちゃん、教育なってないよ♬キッチンスタッフだったら、即、馘(くび)もののミスだよ~♩」
「シェフまで…だってぇ~、『営業中の札賭けてても誰も来ないからいいじゃん、面倒くさい。ほっとけばぁ~』って、道産子のくせに、気風(きっぷ)のいい江戸弁で云ってたじゃないッすかぁあ!?」
「まあ、まあ。ここは一つ、ナイス・ミドルなワイン担当(ソムリエ)のSTO(エス・ティ-・オー)こと、江須帝王(えす みかお)に免じて、ッすっクンの痛恨のあやまちを許してやってくれませんか」
「って、こら、STO。お前、なに様なんだ?たかだか、ソムリエが偉そう
…。だいたいなぁ…『店(うち)には“神尾信二”なんてスタッフはいな
い』で済む案件(あんけん=話)じゃないか。それを、格好つけて大事(お
おごと)にしやがって…大人げない」
「ああ~っ!いい大人のくせして、スタッフの給料を使い込んでオーナーか
格下げされた大人げない総支配人(ディレクトール)が、いい大人ぶって
るゥ…!」
「食材担当(ガルドマンジュ)の波亜 都(なみあ みやこ=ハート、
ミャーちゃん)。いくらペットのウサギが裏切って私に懐(なつ)いてし
まったからって、ワイン以外の酒担当(バルマン)の“上から読んでも下か
ら読んでも”桐野 理季(きりの りき)ちゃんを腹話術(あおもちゃ)に
するのはやめなさい。
 二十歳(はたち)を過ぎたら自分の言動には責任を持たないと、いい大人
は言えないんだぞ」
「二十歳を過ぎて重責ある店主(オーナー)の立場から総支配人(ディレク
ール)へと格下げされた、使い込みーに云われてもね…JO!」
「食器・皿洗い(プロンジュール)のJO姉さん。キミも、いつまでも過ぎ
しまった過去に囚(とら)われていると、いい大人になれずに人生終えて
しまうぞ」
「じゃあさぁ~、過去を無視して前しか向かないディレクトール。貴方は、
だ一花(ひとはな)も二花も咲かせる気なJO?」
「当たり前だ。私には、責任(せきにん=せき)として君たちへの弁済義務
あるんだからな。
 こう見えても、昼食(賄い)が終わったら、芸能事務所のオーディション
受けてこようと思ってるんだ…ニャハハハ」
「と、寅はん!アンタ、手乗りゴキブリは完全に諦めてもうたンかい?もう
っと詰めたら、ええ線(せん=とこ)行きよるで、あれ」
「磯貝・嘘ガイ・外から帰ったら喉(のど)の嗽(うがい)先生。ゴキブリ
(その話)は、飲食店では食品衛生的に相応しくない。それに過去の栄光を
振り返るのは、精神衛生上よろしくない。どうぞ、お願いだから触れない
(ふれない=忘れて)ください。
 私は、過去を振り向かない。過去に縋(すが)るのは嫌いな男なんだ」

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