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Channel: 新・イメージの詩
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天晴れ保育所②~永遠乗せろ②

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「あっ、イケズぅうう~
「女子挺身隊の皆さん。江須貞夫(えす ていお)軍曹を御存知ありませんかッ!耳聡(みみざと)い観念論ばかりを吐くくせに、一度も出撃したことがない、口先だけの鬼軍曹と揶揄(やゆ)されている、ろくでなしの江須軍曹です!」
「兵隊さんなァ…上官の陰口(かげぐち)利(たた)いとると、軍法会議もんでっせ~脚本家、手ェ抜いてまっしゃろ~
「江須軍曹と自分は、バラ族も羨むほどの仲です、お構いなく」
「そかせやったら、喉湿(のどしめ)しに珈琲(ちゃ)ぁ招(し)たろうかと思っとったがやめとくか。せっかく、見た目だけは美味そうなアップル・パイがあるのに…っな」
「し、士官殿…そんなに敵勢語をくちにして大丈夫ですか。憲兵にでも見つかったら…」
「いつの時代の話をしとりゃあせんの?ラバウル小唄の時代は遠くになりにけり、やでェええ~
「ええッ!じゃ、じゃあ…帝国海軍の総大将、山本五十六(やまもといそろく)元帥(げんすい)や、東条英機(とうじょう ひでき)陸軍大将…天皇陛下様は?!」
「アンタはん、小学校の社会科(勉強)もろくにせえへんかったの?ほいで、よくもまあ役者なんぞになれましたなあ
「恥ずかしながら、尋常小学校も通(い)けなかったくらいに貧乏な田舎者でしたので…っで、裕仁(ひろひと)天皇や陸軍大将、海軍元帥の御消息は…」
「…ホンマに知らんようやな…ほいじゃあ不詳、松木則彦殿下が詳しゅうレクチャア…いんやあ、教えたるさかい。苦しゅうない、近こう寄れ。ほいで、一緒に茶ァ飲(しば)こうやないかい」
「で、殿下?だったのですか!これは、失礼いたしました」
「所長(先生)は殿下だったのですか?キリ!
「まあ、専制君主の独裁者に変わりないからねо(ж>▽<)
「道産子の丹波ちゃん。名付け親(ゴッド・ファーザー)に弓引いたらあかんえ~
 
現在・過去・未来
「こ、これは…なんという豪華な…迎賓館ですか…」
「ここはね、保育所って言うの。そして私は保育士。保母さんって、いうの。あなた結構いけてるから、お母さんになってあげてもいいよо(ж>▽<)
「おばさん…その若さで、ですか?」
「丹波ちゃん先生、お願いだから堪(こら)えてくださいッキリ!
「放して桐子先生グーで殴ってやらないと、私の意地と努力とプライドが許さない…о(ж>▽<)
「なァ~に燥(はしゃ)いでいるだでよ~…ほれェ、お待たァ~。今日2杯目の珈琲やでェ~。今回は、滅多に手に入らんトアルコ・トラジャを奮発したったでェ~」
「さっすが松木所長(せんせい)!弛(たる)んだお腹(なか)と同じで太っ腹о(ж>▽<)
「丹波ちゃん先生、キャラ変わっとりゃあせんか?」
「今まで態度と体と顔の巨(大)きなオッキーの抑圧に我慢してただけよо(ж>▽<)
 
「賀間二等兵は、未だ帰還(もど)って来(こ)んのかッ!通信が途絶えたということは…!」
「江須(えす)軍曹、大本営より入電ッ!米・英両国連合軍が、戦艦大和(やまと)を撃沈したそうですッ!」
「なにッ!編入せんでよかった…じゃないッ!いよいよ、本土決戦か…」
 
「本当、血栓がね…って、アホンだら~!成人病、成人病とバカにしくさっときながら、アップル・パイなんぞを押し付けがましく送って寄越しおってからにィ…ホンマ、ごっつう肚(はら)の立つ
「とか言いながら、ミート・パイ食べた後だというのに、アップル・パイを切り分けてるо(ж>▽<)
「食べ物を粗末にしないのが神戸っ子の美徳やないかい…ほいでの、海軍はん。ギャラは幾(なんぼ)だっか?」
「ギャラ…と云いますと…臓物(ホルモン)のことでありますか」
「それは、ギアラ(偽腹=胃)、や。兵隊はん、案外おもろいな…
「自分は不器用な男ですので…申し訳ない!」
「ん?まあ、そう固いこと云わんと座(かけ)てェ~なぁ~、えんた~てえ~な~
「…っは、失礼いたします!」
「いちいち芸人みたいに声、張らないッ…どや、神戸居留区の数ある名店のなかからワテが選んで買(こ)うて来た、トアルコ・トラジャの出来栄えは?」
「失礼ながら…田舎者の自分には勿体なく存じ上げます」
「謙遜しィ~ないなァ~兵隊はんの中でも海軍はんは一番(いっちゃん)美味い食事(もん)食べとったそうやないかい。内科医の磯貝・タフガイ・蝶番(ちょうつがい)が、知ったかぶって嘯(うそぶ)いとったでェ~、もう、かなわんなァ~
「海軍では肉ジャガや、カレーばっかり食べておりました」
「ほう…横須賀と広島じゃあ、味が違うもんだっかァ?
「失礼しました…私(わたくし)、嘘をついとりました…このお詫びに、肚(はら)を掻っ捌(かっさば)いて…」
「まあ、まあ、そう死に急ぎないなァ~銃剣(そがあ)な物騒なモン、早(は)よしまいなァな…聞けばアンタはん。若い身空(みそら)で特攻隊員らしいやないか
「若い身空…自分らの隊に、自分以上の年長者は江須軍曹だけです。『25歳以上の兵士(もの)は南洋へ召集(おく)られて、全滅した』と、聴いております」
「そっか、アンタの演(で)とる映画じゃあ、そがあな設定なんやねどや、騙された思うて、コーヒー・シュガーとミルク、入れて飲んでみんかァ
「はっ。もったいなくも、かたじけなく頂戴(ちょうだい)仕(つかまつ)ります」
「そう肩肘、張らんと…もうちっと、こう…肩の力抜いて、気楽にできひんもんかのう…
「自分は不器用な男なものですから。申し訳御座いません」
「そんな、高倉の健さんみたいなこと言いないな…どや、よかったら、パイ(これ)も喰(ため)してみいな…」
「っは!ありがたく頂戴仕ります…う、美味いでありますッ!これは…」
「そこに居る、桐子先生が急拵(きゅうごし)らえで焼いてくれた、肉詰め焼き菓子や。そっちの何処の馬の骨ともわからぬ山流しの素浪人が焼きくさった、リンゴ入りの焼き菓子と比べて、どっちが美味い?
「田舎者の自分には…両方とも旨く感じます」
「それはなし、や。他人(ひと)の心(め)を気にして自分を押し殺してちゃあ、本当の人生を生きていることにゃあなりまへんで」
「しかし…自分には、誰かの視(め)を気にしているつもりは御座いません。これが平常と思われます」
「なら、砂糖とミルク入れたコーヒーの味はどうや?」
「自分には、こちらの方が美味く感じます」
「ほなら…無糖(最初)のコーヒーで…肉詰め(こっち)ゃと、りんご(こっち)ゃを食べてみいな」
「はっ。頂戴仕ります…リンゴの方が美味く思えました…」

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