プロローグ
「栃木県で開いた蕎麦屋、上手く行ってないんだ」
「っス…開店(はじめ)は威勢の好いことばかり言ってたくせに、いざ蓋を開けてみるとダンマリを決め込み、挙句の果てには厚木の山奥に逃げ隠れしやがって…やっぱり、ネットのブログで知り合った人間を信用しちゃあダメっスね」
「ネットのブログ?誰の」
「これ↓っス…」
「おおッ!この歌なら牛丼屋で聴いたことがあるよ、有名人じゃないか」
「ブログ管理者のマッチーは人間(ひと)の好(よ)さそうな成人病体質らしいっスが、そこに貼り付いてたサンズイに青いオッキーとかいう男(やつ)がいけなかったっス」
「まあ『渡る世間は鬼ばかり』云うからね…あまり過去を恨みなさんな。そんなこと気にして事故でも起こしたら、お前さん、人生台無(ぼう)に振っちまうよ」
「えッ!じゃあ、雇ってくださるんっスか?!」
「人間、一期一会(いちごいちえ)。袖触(そでふ)れ合うも他生の縁、云うからね。明日から社(うち)の配送(車)運転(ころが)してくれよ」
「…!しまった
思い出に耽(ふけ)って運転が疎(おろそ)かになる処だった
っス。


しっかしィ、宝塚の駅前は、馴れないと分かりづらいっス
…住宅街に入って、また戻って来ると思うと
…あれッ!ハンドルとブレーキにガタが来てるっス!?ちゃんと整備してない…![]()
」




「通信兵、こちら賀間(がま)二等兵…機体の整備不備により、やむなく戦線離脱のうえ、帰還する。格納庫(ハンガー)に整備兵を待機させておいてください」
「了解。無事の帰還を祈ります」
「くっそ…2度目の特攻(出撃)もダメだったかッ!なん不運(ついてない)んだ俺は…」
「運(つ)いてる、とか不運(ついてない)とかは考えない…精一杯、正直に面接官の質問に答えれば人生(みち)は開ける
キリ!

今日も張り切って行ってみようォおおー!」
「道はあってる
…とりあえず路側帯(はじ)に停(と)めて点検するか…
」


「点検が終わり次第(しだい)…帰還(もど)ったら直(ただ)ちに再点検させて、三度(みたび)出撃だ…くそッ、着陸(それ)まで持ちこたえてくれよゼロ戦(おんぼろ)…」
「中古車(おんぼろぐるま)め
…よっし、とりあえず、これでオッケーっス![]()


左右確認し、発進の合図(ウインカー)示(だ)して、っと![]()

…うわッ![]()
急に杖をついた爺さんが、お魚くわえたドラネコ追い駆けて、裸足で飛び出して来やがった
!



この、おっちょこちょい野郎!気を付けろ!!![]()
…まったく、最近の年寄りは平気で標識を無視して進入(はい)って…って、おい!そこの自転車(ちゃり)、危ねェだろッ![]()
!一時停止も読めない輩(やつ)がチャリなんか乗ってんじゃねェ![]()
!!






…ったく、初めての住宅街…細い道の生活道路だけに緊張が半端(っぱ)ねェや…気分転換に御陽気な『テレビくん』でも聴いて
…パクっ!

バッカ野郎…飛び出してくるなってェええ…ッ!?![]()
」


消火訓練
「さっ、いつまでも気絶しとらんで、消火訓練の続きしヨっ
…って!桐子先生…そ、その長い日本刀はなんですのん!?![]()
」



「松本先生と一文字違いの松木所長(先生)…さっきの時代劇俳優が小道具を忘れて行っちゃった
…ヴぇええーっ![]()
、本身(本物)の刀ですゥうう~ッ![]()
!?」





「あ、あほ!鞘(さや)から抜いたまま投げるんやないッ!危ないやないかい…![]()
!?」


「はッ!о(ж>▽<)y☆
」

「おおッ!年少さん担当の丹波ちゃん先生
、見事な真剣白刃取りッ
…さっすが道産子、猿鵞鳥(えん がちょう)のセク・ハラに耐えて来たのはダテやないッ」


「今は、所長(先生)のモラ・ハラに耐えてますо(ж>▽<)y☆
」

「あれ?丈姐さんは…?!カナ!」
「さっき、キッチンの片づけに…じ、地震ッ
…キリ!」

炎のタイムスリーパー
「ここは何処だ」
「へ、兵隊はん![]()
」


「そう云う貴殿は生活習慣病の塊(かたまり)…」
「誰がじゃ!?そいは、一文字違いのこいつ↓やがなッ!
ほんまにもう、時代劇フェチといい、兵隊ヤクザと云い…なんて日だァああ~ッ
」

「そこの可愛い女子挺身隊さん、自分は何処に不時着したのでしょうか。そして、自分の愛機(ゼロ戦)は…」
「なに、しとんねんッ、保母さん方ッ
!戦争映画フェチか自衛隊フェチやら知らんが、こがあな不審者の世辞に乗せられて、ワヤワヤするでないッ
…みっともないッ![]()
」




「限りなく成人病に近い貴殿が、こちらの士官殿でしょうか。自分は、第9特別攻撃隊隊員の賀間 夏路(がま なつみち)。通称、ゲロゲ~ロと申します(`・ω・´)ゞ」
「ワテは天晴(アッパ)れ保育所の最高責任者
、CEO(シー・イー・オー)の松木則彦(まつき のりひこ)だすッ
。よろちくビーっ!![]()
」




「なんとッ!決死の思いで出撃した特別攻撃隊員に向かって敵勢語の虚(うつ)けた挨拶を返すとは…いくら士官殿とは申せ、無礼千万ッ!軍法会議に掛けるまでもなく、この場で撃ち殺して…痛いッ」
「どないしはった?大工特別神戸鯛対印
」

「おのれェ…憎き鬼畜米英の被弾による名誉の負傷さえも笑い話(もの)にするとは卑劣な…このォおお、成人病もちィいい…」
「ワテは七沢のアホンだら~と違(ちゃ)いまんどー
…どれ、ちくゥと診(み)てしんぜよう…。

…ほうッ
!

あんたはん、好い手相してまんなァああ~ッ
、運命線と生命線が、こがあに薄短い人は見たこたァないがなァああ
」


「名誉(めいよ)ある特別攻撃隊に選ばれた以上、長生きしたいとは望んでおらんッ。
ええ~い、いつまで掌(て)を握っておる…離せ、気色悪いッ」
「ああっ、イケズぅウウ~ッ
」
