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Channel: 新・イメージの詩
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抜け殻(ぬけがら)

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  これは、あなたに勧めているわけでは御座いません。世の中には、「こういう考え方があり、それを実践している方が居る」と、云うことです。また、現在ではいろいろな研究により、それぞれの栄養素の効用や弊害(へいがい=副作用)についての情報が公開されております。
 実践されます方は、くれぐれも御確認の上、自己責任・自己管理の下(もと)で行って下さい。
 下記に関連書籍青文字クリックで全文が通読できますを、無断転載させていただきましたので、よろしければ御参考までに、お読みください。
 
 (故マックス・ゲルソン 著)
 (故マックス・ゲルソン 著)
 (マックス・ゲルソン博士の3女が記した本)
 (ゲルソン博士による、ゲルソン療法により完治した患者へのインタ ヴュー
(5生存率0%の大腸ンから肝へと転移した医師、星野仁彦:著)
 (日本人だけなぜ、がんで命を落とす人が増え続けるのか―化器科の 権威がすすめる驚異の栄養・代謝療法
  (済陽高穂 
  (済陽高穂 
 (済陽高穂 
 (日本におけるゲルソン療法実践医師による対談・比較集)
 (2冊とも星野先生が実践された中野良一医師の著作)
 
抗がん剤治療では治らない!」――現役の医師が生き延びるためにまずしたこと、それは抗がん剤を拒否することだった。 大腸がんを患い、肝臓への転移が見つかったとき、突きつけられた数字が「5年生存率0%」。この数字は病院のいかなる治療を受けても、5 ...
 
 
 
 
P.22 抜け殻(ぬけがら)
 
 医局に戻ると、私(星野仁義彦)は倒れ込むように椅子に座りこんだ。デスク(机:つくえ)には資料が積み上げられていた。一番上の資料を手に取って開いてみたが、読めない。理解できない。文字が並んでいるだけだ。私(星野)は資料を閉じて窓の外を見た。検査結果を待っていた時と何も変わらない。私(星野)は不意に受話器を取り自宅の番号を押した。3回のコール(呼び出し)音が鳴った後、妻の声が聴こえて来た。
 「検査の結果が出たよ」
 私(星野)は自分の声に驚いた。パニック状態の人間とは思えないほど落ち着いた口調だったのだ。ところがその口調に、妻は何かを感じていた。黙(だま)って次の言葉を待っている。
 「…ガンだった。詳(くわ)しいことは後(あと)で話す」
 それだけ言うと、妻の反応を待たずに私(星野)は受話器を置いた。動揺(どうよう)している自分と、それを抑(おさ)えようとしている自分。感情を爆発させたい自分と、平静さを装(よそお)うとする自分―完全に心のバランスを失っていた。妻への電話は出かける前に交(か)わした約束だったが、約束を守ろうとして電話をしたわけではなかった。妻に、ガンであることを伝えたかっただけだった。そうすることで気持ちが少し軽くなる、と思ったのだろう。
 私(星野)は、もう1度、デスクの資料を手に取った。開いたものの、やはり何も考えられない。仕事ができる状態ではない。椅子から立ち上がり資料をデスクの端(はし)にまとめた。コートを手にして逃げ出すように医局を出ると、消化器外科の外来に向かった。ドアを開けると、後輩は相変わらずデスクに座って資料を読んでいた。私(星野)に気付くと椅子を回転させ、身体を私(星野)の正面に向けた。
 「ここで話しますか?」
 「いや、家まで送ってくれないか」
 
 妻は微笑(ほほえ)みを崩(くず)さずに応(こた)えると、私(星野)の背中をそっと押して階段に向かわせた。背中を通して妻の手が微(かす)かに震えているのが判(わか)った。私(星野)は振り返らずに階段を登って行った。
 2錠(じょう)の睡眠薬を水で流し込み、妻の視線を感じながら目を閉じた。少しずつ睡魔が忍び寄り、感覚が鈍(にぶ)くなって行く。寝室のドアを妻が閉める音が、ボンヤリと聞こえた。ゆっくりと階段を下りて行く妻の足音はリズムを乱すことなく少しずつ小さくなって行く。自宅の階段は、こんなに長かっただろうかと思うほど少しずつ、少しずつ。私(星野)は、小さくなる足音に導かれるように眠りに落ち、そして夢を見た。
 それは、(2005年の)今でも脳裏に刻まれて忘れることが出来ない、悪夢だった。

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