宝塚財界の大物・犬上(いぬがみ)マチが莫大な遺産を残して、この世を去った。マチは生涯に渡って正夫を持たず、それぞれ父親の違う娘たちが3人いたが、娘たちは、みな遺言状ばかりを気にしていた。
そんななかで唯一、マチの死を悼んでいたのは、彼女の恩人、亜帆野 奥菜(あほの おきな)の孫娘で、マチも可愛がっていた犀寅(さいとら)であった…こ・こわ~ッ!
注:コメ乱入者の埼玉の寅=フランク・サイトラさん、です![]()

「で、犀寅はんが、松本湖で逆立ち状態で死亡されとったキヨはんを発見された詳しい状況を、も1度、教えとくんなまし」
「犬上の家には代々、『佳(よ)きことを聴く』の喩(たとえ)から、斧(よき)・琴・菊が3種の神器として伝えられてきました…」
「キヨはんが逆立ちで、“ヨキ”でんな…ウ~ン、どこかで聞いたような話デンな~」
「あちらの離れには、ジャパネットでも買えない高価で豪華な“東京カジノ”の琴が3棹(さお)置かれとります…それが、今朝起きて見たら、寝床が北枕に敷かれとったのです」
「北枕…床を逆にして、“ヨキ・コト・キク”の『コト』でンな?」
注:東京カジノ=エレキギターの有名ブランド、エピフォン・カジノのもじり、です![]()

「犬上の家には代々、放蕩(ほうとう)息子が遺(のこ)した『にっぱち』という名の歌唱集を聴く風習(しきたり)も…」
「ま・まっとくんなはれっ…ほ、ほいじゃあ、“ヨキ・コト・キク”の『キク』は、家紋の菊ではのうて…」
「そうなのです。犬上の一族は代々、この3つの仕来(しきた)りを村主(そんしゅ)から尊守(そんしゅ)させられて参ったのです」
「まいったなア~、犬の上で『いぬがみ』で、犬上家の一族でっか…」
「?当家には1人、行く方(ゆくかた)知れずの者が御座いまして…。遺言によりますと、その者を探し出した者に全ての権利を与えると…」
「いくら『平成の金田一』と言われた、金が第1のワテ、金賀 太一(かねが だいち)かて…」
「手掛かりはあるのです…犬上の家では代々、脚(あし)が丈夫な犬にあやかり“戌帯(いぬおび)”の代わりに犬の絵が描かれた絵を御守(おまもり)に…」
「戌帯の代わりに、犬の絵を描いた紙を…ほうッ!犬紙家の一族、でんな?」
「早まらないでください、金が一番さん」
「か・ね・が だ・い・ち、です。御間違いないように、お願いします。お人聞きの悪い…」
「まあ、その…失礼しました、金が欲しいさん。犬上の者には代々、犬の毛のように短くて滑らかな頭髪を有しておりまして…」
「アンタ、面白がって、ワザと間違えてるだろ!って、犬髪毛の一族ゥう~っ!?」
だアれも乗って来ンなァ…ヒンっ!
「アンタ、面白がって、ワザと間違えてるだろ!って、犬髪毛の一族ゥう~っ!?」
だアれも乗って来ンなァ…ヒンっ!