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Channel: 新・イメージの詩
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嵐のあとに~童(わらし)の尾(あと)に~

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「スッと投げちゃいました…よね?いま…。
ねっ、元オーナーと現オーナー!」
「…」
「…」
「あと…格好いいこと云っときながら、外国娘の背後(うしろ)に素早く隠れて、出来損ないのソーセージみたいな指の間から見ていたプクプク野郎様?
こ、この、お・お嬢様…一瞬にして、刃物を持って突っ込んで行ったオッチャンさん、投げ飛ばしちゃいましたよねえ?!」
「リ・リンダはん…いつから、そがいな芸当、身につけましたンえ?」
「芸妓ハンミタイデ、気色悪(しょくい)デ、磯貝・まじカイ・信ジンカイ、せんせ」
「す、すごいぞ、松の字!し、しばらく見ないうちに、リンダちゃん、腕あげたじゃねぇ~か。びっくらしちまったぜぇ!」
「そ・そりはな、寅はん。
…ワテがCD売らず、ブログも更新せずに、必死こいて捜し当てた場所に関係あるんよ」
「う、うそヤデ、寅ハン。えテと4ノ字、関係シトランデェエ!」
「ちょっと待て、松の字。その前に整理しておきたい件(こと)があるんだ」
「あんたなあ、寅はん。ワテのガサツな性格、よう、知っとるやろ?
 誰が整理なんぞ、しまっかい!」
「松木(アンタ)は『松木さん』で、『松本さん』じゃねぇんだよな?
 おかしいじゃねえか!
 さっきから、黙って聴いてりゃあ、やけに『松本』『松本』って、サブリミナル広告みたいに連呼しやがって。
誰も、音楽活動はおろか、ブログの更新すら滞(とどこお)らすような男(人間)のCDなんぞ買やあしねぇゾ」
「『松木はん』云うのは世を騙(しの)ぶ仮(かり)の姿やないかい。その実は、東京は蒲田(かまた)の東芝音工で配送のバイトに明け暮れながら、元オフコースの松尾一彦はんとギター弾いたり、酒飲みながら野望に燃えたぎとった若き獅子。いまじゃあ、夢も希望(ちぼう)ものうなった野望の燃えカス、プクプク仮面とは、ワテのこっちゃあ!
 …こ、こりィ…笑う場面(とこ)やでェ…笑う場面やないかいなッ!」
 「内科医の磯貝・タフガイ・クールガイ、でっけど?」
 
「笑えねぇえよなぁ…内科医のオーナー?」
「っス…。副料理長(キノさん)。外人さん、抱(い)かないっス?」
「笑えねぇんだよ、コミ(おまえ)も!
あの場面に割り込んでッたら、漢(おとこ)だいなし、じゃん!」
「アンドレ~、私の可愛いアンドレ~。カクレンボしてないで、早く出てきて、お姉さんの胸に抱かれなちゃぁあ~いっ♡」
「はァ~い、男、木下。飛び込ませて…って、ダァカァラァ…叩(はた)くなって…!」
「悪い♪つい、癖で…申し訳ない」
「おい、おい、丹波りん。
 癖は治した方がいいが…『客が来ねぇから』って、皿洗い(プロンジュール)のJO!姐さんと、食材担当(ガルド・マンジュ)の都(ミャーちゃん)。製菓担当(パティシエ)の曽宇 加奈(そう かな)ちゃんに、ワイン以外の酒担当(バルマン)の“上から読んでも下から読んでも桐野 理季”のキリ!ちゃんが、厨房(キッチン)で遊び回ってるぜぇ~…?痛(って)ぇ、なんで、また頭(おれ)叩(はた)くかなぁあ…」
「副料理長(あんた)が、とっとと、毛むくじゃらのウサギ(齧歯類:げっしるい)捜(み)つけないから、いけないんじゃない」
 
「見詰めないで、則彦、照れてまうゥう~」
「松の字さあ、お前、ホント成長(かわら)ねェよなぁ…」
「そがあなことあるかいッ!
寅(あんた)が『宝塚過激男病院事件』を契機(けいき=き)に、あんだけ繁盛(はんじょう=はや)っとった広告代理店畳(たたむ=つぶ)して、『新しい事業(こと)にチャレンジする』云うたから、ワテは『初恋に小さな胸をトキメかせるながら、教室の陰からグランドの先輩を見つめる健気(けなげ)な女子高生』か、『愛しい人を温(ぬる)い視線(め)見守る座敷童(ざしきわらし)みたいに、陰でソッと、見守っとったんやないかい。
なあ、内科医の磯貝センセ」
「内科医の磯貝・タフガイ・クールガイ、です」
「ホイを、云うに事欠いて…誰かはんの妄想小説のおかげでCDが徐々に売れ出すわ、音楽活動の依頼かて殺到しとる云うのんに、本業の保育所運営だけで、ロングボディー・ショートレッグだからか、手も遅(のろ)いだけに、泣く泣く断(ことわ)っとるなんて…ホンマのこと、云わんでもええやん。ワテ、恥ずかしゅうて、照れてまうがな。いけずゥう~」
「まあ、まあ。イケズか池の鯉だか知らねぇえが…アレ、だあ」
「ソレ、デンガナぁ、寅ハン!ワテ、歌手ナル夢、諦(あきら)メテナ、違法滞在シナガラ貯メ込ンドッタ、父親(オとん)ノたいりょくじじい(ほれ、出しとったでぇ~。泣いて喜んだってぇ~な!)カラ資金援助サレテ、日本(こっち)デ、事業(しょうばいい)始メテタんヨ」
「おっ、それって。リンダちゃんも、『俺(おいら)同様“新しいこと”にチャレンジしてた』ってぇことかい?大(てぇ)した魂消(たまげ)た話だねぇ~」
「玉、蹴(け)ッテナイヨ?りんだ」
「ボケ(それ)はいいから、できるだけ短く、逢えなかった間の時間を埋める『身の上話』って懐古談(やつ)を聴かせてくんねぇえか。
 俺(おいら)、逢いたかったんだぜぇ~」
「『アッ、痛カッタ』、昔ノ話ネ。今、故郷(くに)ノ名産品、コド鯉養殖ト、故郷ノ武術“グレイター柔術”ノ道場、開(ヤ)ッテルネ」
「そやねん、寅はん。
 あんたんとこの店が右肩下がりで底着いたさかい、三ッ星U.F.O銀行に資金援助求めたやろ?
 たまたま、保育所(うち)に来とった行員はんから聴いてな、そりゃあビックリしたもんや。
 なあ、内科医の赤貝センセ」
「内科医のイソ・ガイでんがな」
「…んで、横浜の嫌われ者(もん)で神戸の六甲山(おやま)で、惨(みじ)めなまでに分相応(ぶんそうおう)に行き倒れとった男―噂じゃあ、厚木の七沢(ならさわ)云う山奥(とこ)で、野良猿や野良鹿、野良猪に野良熊云うた、過激な野良動物たちと暮らしとるらしいんやが―を看取(みと)ったっちゅうことが縁で、総合病院の院長に成り上がった磯貝・これかい・蝶番(ちょうつがい)センセと噂話で楽しんどったところ…」
「俺(おいら)お楽しまれてたんかい?!」
「そらァ~、メッサ(じゅうぶん)、お楽しませてもろたでェ~。ありがとな、寅はん」
「お、おのれぇ…バカ貝オーナーがぁああっ」
「ほいたら、寅はん。タイリョクジジイを追い駈けて、お三宮(さんのみや)で健気(けなげ)に働かんバイク乗りの兄ちゃんたちと遊んだやろ?」
「ああ、遠い夏の幻だな…夢だったのかな」
「夢なことあるかいなッ。西宮や、お三宮界隈(かいわい)じゃあ、アルカイダや神田ハルはん以上に、有名な話になっとるわいッ。
『1人で100人以上の暴走族と闘(たたか)って勝った酔っ払い』云うてな」
「ああ、そんなこともあったな…夢だったのかな」
「ンで。そこな兄ちゃんたちが、『酔っ払いに復讐するために体鍛えたろッ』云うて、新しく開いたスポーツジムの評判を仕入(聴)いたんや。なあ、磯貝・マイトガイ・ダンプガイ、センセ」
「語呂が悪ゥナァ~、磯貝・タフガイ・クールガイ、にしとってやぁ~」
「ソガナコトええヨッテ、早(は)ヨ、話、進行(ツヅケ)ンカイ」
「そいで、行きついたンが。リンダ(お嬢)はんやったンよ。
 ドクターフィッシュ云うて、肌の角質を取ってくれはる魚はん、おますやろ?
 この嬢ちゃん、それに似た魚を日本(こっち)で売りこんどったんよ」
「『コド鯉』だぁ~?なんてスットコドッコイな名前の魚なんだ。売れやしねェよ、そんな魚」
「せやった、んよ。
夢と希望に燃えたぎって再上陸を果たした嬢ちゃんやったが、見た目と味の悪さが災いして、どうにもならない(よういわん)状態に陥(おちい)ってまったんな?
そんで、次に思いついたンが、『復讐という名の美学に萌(も)える』しか時間潰しが思いつかない、勤労意欲の欠片(かけら)もなけりゃあ勉学に励む意思などサラサラない、ドロドロのアウトロー…まあ、早い話が『出来損ないの落ちこぼれ』やな。
こ奴らが無茶して稼いで来た稼ぎを、合法的に巻き上げてまうことやったんな」
「8の字、ソガア褒(ほ)メンナ、ッテ。照レクサイヤナイケ…りんだ、困っちゃう♫」
「誰が往年の名レスラー、ジョニー・パワーズのキメ技やて?」
「もういい、その話は。おそらく、だあれも付いて来れんだろからな。先を急いでくれ」
「ほっか?ほなあ、しゃあないな…なんでも、コド鯉いうピラニアの1種…鯉(こやつ)が入ったプールん中で、鯉(さかな)に喰われることなく相手を倒す、ブラジルの方に伝わる幻の格闘術―かの有名プロレスラー、餡(あん)が匂(にお)う猪木はんも認めた、試合中にグレたら流れを無視するから怖い、暗黒の格闘技『グレイター柔術』の創始者であり、師範代として三度(みたび)密入国しとったンよ、リンダ(この娘:こ)?!」
「てへッ!」
 
「密にコクを持たしたいんだけど、シェフの丹波りん。いいアイデアない?」
「そうだねぇ~、パティシエの曽宇 加奈ちゃん。黒蜜みたいに炊(た)くか、バーナーで炙(あぶ)るなんてどうかな♩」
「糖分は高温で変性してコクと甘味(うまみ)と甘味(あまみ)を引き出すカナ!―もらいました、そのアイデアっ」
 
「旨味(うまみ)を引き出すためもアイデアとして酢と、コド鯉を和(あ)わせた料理(もん)喰わせてもろたが、いただけんアイデアやったな…カラス貝センセ」
「内科医の磯貝・タフガイ・クールガイ、でっせ?園長センセ」
「セヤッタ…日本人、コド鯉、受容(うけい)レテクレナカッタ…ソヤカラ、さーかすヤ映画カラあいであ、ぱくッ!ッタネ。
 練習クル客(ひと)、勝テモセエぇヘン相手ニ復讐(ふくしゅう)誓ッテ自分、見失タばかバカリ。
 練習前ニ、『けがシテモ、一切、自分ノ責任』書ク。ホンデ、高イ入会金ト月謝、払テクレルネ。
 ソコデ今度、女性客、狙ッテ『かーうぃー・だんす』云ウ名前デ、ふぃっとねす始メタヨ。ソシタッケ、こけテモウタネ」
「ほんでもって、『このまま故郷(くに)帰ったら、タイリョクジジイに殺される』云わはって、タイリョクジジイの部下やった磯貝・タブーガイ・ケーブルガイ、センセに泣き付いて来たんや」
「お前、何もしてねェじゃねぇーか、松の字!キショーメぇ?!」
「シンガーソングライターとしてCDも発売してアマゾンだけで販売し、手売りは一切せえへんワシが、持てる才能フルに発揮して、脚本(台本=これ)書いたやん」
「どーりで、偏屈(へんくつ=おかし)な話だと思ったぜ」
「下町生まれで山の手育ち。埼玉在住の江戸っ子気質(きしつ=かたぎ)な寅(あん)さんのことや。昔の友人の援助は断る、に決まっとる」
「たりめえだ。援助交際(えんこう)と銀行は好きだが、猿(さる=えん)こうだけは大(で)ぇ嫌いな俺でぇえっ。“手乗りゴキブリ、ペット化計画”には乗っても、そんなバカげた話に安易(あんい=やすやす)と乗るほど腐っちゃいねぇや。このスットコドッコイ!」
「酢ト、コド鯉、アウネ。体(健康)ニイイネ。デモ、日本人、受容(うけい)レテクレナカタ、ネ。リンダ、困ッチャッタネ」
「で、や。
CD2枚も発売したのに売れ残っているにもかかわらず、音楽活動もブログもせぇへんくせに、肩書(なまえ)だけはプロのミュージシャンを名乗る宝塚のアカンたれと似た男『松木則彦』として『L'AGAPE(ラ・ガップ=こん店)』に乗り込んで来た、いうこっちゃがな」
「せやで、寅はん。
 アンタはん、ワテに言いましたな。『飲食の経験はおろか、レストラン経営もしたことのない磯貝(人間)にフレンチレストランのパトロン(オーナー)が務(つと)まる筈(はず)ない』いうて」
「たりめぇえだ、このボンクラ野郎のコンコンチキが。
 こちとらフランス料理の名店に育って、自ら興(おこ)した広告代理店を畳(たた)んでまで料理の世界に情熱を傾けに飛び込んで来た、経営のプロだってぇのに…この結果(ザマ)だってぇのにい。
飲食、舐めんなよ!」
「寅はんな…」
「な、なんでぇい、松の字。ほ、ホントのことは内緒(ないしょ=い)うんじゃねぇぞ。友達だろ?!」 
「『レストラン』言う言葉の語源は、『"Restaurer=レストレ"』言う、14世紀のフランスで生まれた言葉に由来しとるそうや。
  意味は、“肉体的機能を回復させる”っちゅうこと、らしいがな。そやから、『元気にさす滋養となる飲食物を提供する、"Restaurant=レストラン"が、元気を回復する場所』云うこと、でんねんな。
 アンさんの経営方針には、この『誰かさんを元気にさす、健康になってもらいたい』云う、思いが抜けとるんちゃうか。
 ただ、闇雲(やみくも)に、『自分が正しい』『自分の料理は美味い』『他のレストランには負けとらん』って、全部が『自分の押し売り』なんや」
「たりめぇだ、馬鹿野郎。自営業者が自分(てめぇ)安売りして、どうすんでぇい?
こちとら葛飾柴又(かつしかしばまた)の帝釈天(たいしゃくてん)で産湯(うぶゆ)に浸(つ)かりそびれちまったが、映画『男はつらいよ』の参道エキストラで後姿が映った、チャッキチャキの江戸っ子でぇえ。
弾いてるギターも、京都の名工“茶木(ちゃき)”だぜ、ってぇの!」
「飲食店―レストランはホスピタリティー(もてなし)の精神(こころ)やないかえ、寅はん?」
「それじゃあ何かい?俺(おいら)の店は、裏・裏・裏の裏ばっかしで、表がない『おもてなし』だってぇのかぁ、こんガキャー?
 いくら古い友人・知人・猿人みたいなプクプク野郎でも、云っていいことと悪いことがある、ってなもんだ。えっ、松の字!」
「バカにしてきた両親や、見下(みくだ)されとった元の従業員(スタッフ)さん方を見返したろ、見返したろ、と思えば思うほど、あんさんの精神(こころ)はドツボに嵌(はま)ってまうんやで?
 社会保障の個人負担額にかて手ェつけてもうて、どないする気ィなん?
従業員(スタッフ)さん病気(体こわ)してもうても保険治療、受けられひんぞ?」
 
「『受けられひん』だって…チョー受けるぅ~。
 なっ、なっ。あのプクプク野郎。上から目線のブログも更新しねえくせに、とんでもなく真面(マットー)なこと云いやがんよな?っな、なっ?!」
「木下(あんた)ねえ…さっきから、あっち向いたりコッチ向いたり、どっちの味方で、何が言いたくて、何をやりたいの?」
「べらんめぇ~、シェフの丹波りん。俺(おいら)はただ、あの外人さんを、ギュッと抱きしめてぇだけ…って、だからぁ…頭、叩(はた)くなよ、って…?!」
 
「頭叩(あたま はた)いて冷やすんや、寅はん。腹下(はらくだ)しは治(おさ)まったんやろ?

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