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Channel: 新・イメージの詩
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奴らの足音⑤

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「『振り出し』が違(ちがう=ちげぇ)んだよ、パティシエの曽宇 加奈(そう かな)ちゃん。
 粗挽(あらび)きスパイスは横に…で、細挽(ほそび)きは縦(たて)に振り出し…な?
 木下(オジサン)の前に来なさい。手と足さわって、舐(な)め回すように教えたげるから…痛(て)っぇなぁ~、緊張を解(ほぐ)すための、チョッとした小粋(こいき)なハリウッド・ジョークだろうが…」
「副料理長(木下=あんた)が云うと、冗談に聴こえないんだよ♬」
「アレだろ、丹波りん?俺が女性スタッフ全員に、同時期に袖(そで=フ)られたことを、まだ怒ってんだろ。
 だったら断(こと=きら)われた俺を憎まずに、断(ふ)ったスタッフ(こいつら)に怒りの矛先(ほこさき)を向ければいいじゃんよ~。さては、本当は惚れてんだろ…痛(っ)て!
 痛い点(ところ)を突かれたからって、俺(ひと)を叩(いた)めるこたぁないだろ?炒めるのは料理だけにしてくれよ、まったく…もてる男は大変(てぇへん)だぜ」
「副料理長(ワー公)、無駄口叩(たた)いてないで、ソース仕上げる♬」
「へへ~んだ。ソースさえ仕上(でき)ちまえば俺(おれ=こっち)のもんさ。誰が叩(はた)かれるか、って…痛(て)っ!?
…ど、どうしてソムリエのSTO(エス・ティー・オ)っさんが厨房(ちゅうぼう=ここ)の副責任者である俺の頭を…?
ワイン蔵(ぐら=地下)に戻ったんじゃねぇのかよ…」
「パスタ(ペペロンチーノ)に合うワインを、お持ちいたしました。
 ペペロンチーノ(絶望と孤独のパスタ)―香ばしいガーリック(大蒜:にんにく)の旨味(うまみ)に、ピリッと唐辛子(とうがらし)のアクセントを効(き)かしたシンプルなパスタ―ペペロンチーノには、『コート・ド・フロヴァンスのロゼ』など、如何(いかが)でしょう」
「ワイン以外の酒担当(バルマン)の“上から読んでも下から読んでも桐野 理季(きりの りき)”ちゃんでも知っているワインは『コート・ド・“プロ”ヴァンスのロゼ』の筈(はず)なんですけどね、なのよね」
「バルマンだけあって、よく、お勉強されておりますね。“上から読んでも下から読んでも桐野 理季”ちゃん。
 たしかに『コート・ド・“プロ”ヴァンスのロゼ』は、南仏産の辛口(からくち)ロゼワインで、爽(さわ)やかなスパイシーさが、ペペロンチーノの風味を引き立ててくれます」
「おおっ!バルマン、遊んでるとばかり想ってたら、真面目に勉強してるじゃん?!」
「皆さん、ホント仲良く、声が揃って来ましたわよのね」
「『しかし』で、御座います。
 私(わたくし)が選(チョイス)したワインは、『コート・ド・“フロ”ヴァンスのロゼ』で、御座います」
「まぁたぁ、紛(まぎ)らわしい展開(こと)を…作者って野郎は、たまに貰い物をしたからって有頂天になりやがって、かなり性格が歪(ゆが)んで来てやがるんだろうな…っ痛(て)!誰だァ?思いっきり棍棒で俺の頭ぁ殴りやっがたのはぁ?!俺が死んじまったら、誰がバンドに楽器と人脈、提供するんだぁ?!
 サンズイに青い水の人じゃあ、絶対(ぜって)ぇ出来ねえ芸当だぜぇ!」
「まあ、ソムリエの私(わたくし)といたしましては、クチは災いの因(もと)と申しますので、権威者(けんいしゃ=作者)の悪口は控えさせていただきます…」
「キったねぇえなぁ~、自分とこのスタジオ、宣伝してもらおうってぇ薄汚ェ魂胆、丸出しじゃねぇか…痛(って)!?」
「STOっさん。総支配人の補佐役(メートル・ドテル)級(きゅう=なみ)に打算的な俗人だぁ~」
「皆様、声を揃えての嬉しい御評価、ありがとうございます」
「褒(ほ)めてないんだけどなぁ…昭和28年(にっぱち)世代って、こんなんばっか?…っス」
「まあ、無理やり『っス』を付けずとも、了承しておりますから…このワインをテェイスティングするならば…。
 残暑が去った秋晴れの野に放たれた、毛の生え変わり時期(じき=トヤ期)のヤサグレた毛足の長い(ロングコート)チワワがドブに落ちたまま、沐浴(もくよく=水浴び)もせずにガビガビになった体臭…と、いったところでしょうかねえ」
「飲んで美味しいンか、そがあワイン。そんでもって、楽しいンか?そがあな薀蓄(うんちく)並べとって?なあ、最近こそブログの更新を欠かさへんが、音楽活動もせんのに『ミュージシャン』名乗ってはる、バイトルに保母さんの求人出して東芝音工時代のバイト仲間で、元アドマン(広告マン)の友人にダメ出し喰らはった園長センセ」
「まあ、薀蓄も音楽活動やブログ同様に、やりたくなるまで待っとってェ~な~、えんたー・てぇ~な~。
 薀蓄なんぞ、屁みたいなもんやゾ」
 
「ウン…ちクンがなぁあ…」
「ど、どないしはったン?兄貴ィっ…ま、まさかァ?!」
「さっきのラーメン屋…熱(あ)っついスープ足(た)しとったやろ?」
「へ、へい…ついでに『ワテも同じ兵庫(ひょうご=かんさい)は宝塚線の山本駅近くの出身やさかい』とか、聴き難(にく=づら)い濁声(だみごえ)で、勝手に麺のおかわり(替え玉)までしてくれはりましたがね」
「それが…どうやら…罠(わな)だったらしい…」
「へっ?なに言うとンの、兄貴ィい?
 そりゃあ、齢(とし)の割には派手な頭(スプレー)してはったけど…風の噂でん、『情けは他人(ひと)のためならず―ウンチ拾いは運気拾い、とか言いながら毎朝、店の周りを掃除しとる』らしいで?あのチンチクリン親父」
「せやで、兄貴!
 背の割には首と腕と腹がダブついとって、プクプクしたチンチクリンやったけど、それなりに善人(ええひと)そうやったやないかい。
 一緒に店番しとったゴールデン・リトリヴァーなんぞ、もう人懐(ひとなつ)っこうて、主(あるじ=オヤジ)以上に可愛かったやなかったでんがな?!」
「あ…あのオヤジ…俺のドンブリに、『運気がようなるように』とか云(ぬ)かしおって、犬のチョメチョメ入れやがった…は、腹が…」
「い、痛いンでっか?あ…兄貴ィい~っ?!」
「どないしまひょ…森と畑と田圃(たんぼ)ばっかしで、病院どころか、パチンコ屋(ぱちや)もあらへんでェ…ラーメン屋戻るにしても、同じような風景(景色)ばっかで道、解らへんし」
「これも全部(みな)『旧車会(きゅうしゃかい=雑誌=本)』が悪(わる=いけン)のや…暴走族なんざあ『社会悪』とまで表立って云われとるくせに、いい加減な雑誌(本)まで出版(しゅっぱん=こさ)えおってからにィ…。
 ええか、兄弟(おまえら)…遠征(えんせい=こい)が終わたら、こんデタラメな縦(たて)社会(=暴走族)など抜(ぬける=やめ)て、ブラック企業に騙されンよう気ィつけながら…真面目(まじめ=まっとう)に生きてこな…」
「あ、兄貴ィ…腹壊して白目剥(む)いとるくせに、ようもまあ、そがあな長台詞、喋(しゃべる=い)えたもんやな…」
「おう、ガッテンのシゲ。ひとっ走りして、上目遣(うわめづか)いで睨(にら)んだだけでトイレ貸してくれそな、気ィ弱げな小市民、探してこんかいッ!」
「ガッテンだ!『睨(にらむ=メンチ切った)だけで言いなりになる小市民』でんな?!」
 
「『麺地(めんち)切っただけで、いい装(なり)になった自家製パスタ』とか、どうだろう?」
「何、それぇ~♪料理人のくせに腐(いた)んだリゾット食べてピーピーになっただけあって、最悪ぅ~♬センスの欠片(かけら)も感じらんなぁ~い!却下」 
「そんなこと言うなよ、丹波りん。これでも昔は細い木の女(ひと)や、ケンちゃんチャコちゃんのカタッポの店を繁盛させた、敏腕アド(広告)マンなんだぞ。
まあ、もう『手乗りゴキブリ』みたいな悪乗りした商品に投資してくれるような小資本家を捜すのはやめるからさあ…みんな、俺を許してくれないか」
「内科医のワテとしては、衛生問題さえクリアすれば、いけるんチャウかな“手乗りゴキブリ”。クワガタがブレイクしたんやで?角とって、体に艶(つや)だしたら、そっくりやん。そがあなこと云わんで、もう一踏ん張りしてみんかね?寅はん」
「ゴキブリは噛むんですよ、ウバ貝先生。あと、追い詰められたら、顔に向かって飛んで来るのがネックなんですね」
「そがあな性質(モン)、『懐(なつ)いとる証拠』云うたりいな~。敏腕広告マン、やったンやろ?」
「誇大広告(それ)は、どうかな…方便(ほうべん=嘘)は、もう勘弁してください」
「あ~あ、もう…白衣(キッチン・コート)どころか、ナプキンも付けずにパスタ・ソースなんか味見してっから、ワイシャツと背広(せびろ=ジャケット)がソースだらけになった、元オーナーなのに今は格下げされてディレクトール(総支配人)になった寅さん。突然、ナニ言い出すんですか?
 ワルは悪らしく、最後まで、ギトギトに悪漢しててくださいよ!」
「たしかに俺は賀真ちゃんの言うとおり、オーナーから総支配人の補佐役を務めるメートル・ドテルの次に偉い、総支配人(ディレクトール)に格下げされた情けないけど、自分では格好いいと思っているモテ男だ。
 それだけに、俺は実質的な経営者、だということを忘れるなよ。口を慎め」
「違うでしょ。名前だけで、何(なん)も権限のない名誉職じゃないですか。いつまでも、そういう上から目線でいると仲間外(なかまはず)れにされちゃいますよ?」
「何ぃっ!俺の部下で、横書きの肩書だけは大したもんだが、大した出世もできずに3流週刊誌やスポーツ新聞のスケベな切抜き集めてるメートルのくせに…偉(えっら)そうに!
 1円ずつでも返済し終わって、オーナー権限を取り戻した暁(あかつき)には、平給仕(コミ)と入れ替えてやるからな。覚(おぼ)えとけよ」
「やったぁーっ!これで給料、上がるっス!」
「お喜びのところ、申し訳ない。ソムリエのSTOですが、1円ずつの返済では、コミ(あなた)は退職し、下手(へた)したら亡くなられてる可能性が大(だい)ですが?」
「ダメっス、ディレクトール!せめて100円返済にして欲しいっス。そうすれば100倍早くなるっス」
「コミ(おまえ)はバカか?
タレントとして1流芸能プロダクションに勧誘(かんゆう=さそ)われて、芸能界の頂点を極(きわ)める予定まで企画(きかく=た)てた男だぞ?
100円なんてしみったれた返済(こと)できるか。千円だ、千円!すっごいだろ?千倍も早く返済できるんだぞ?!」
「“芸能界を目指す人間(やつ)に普通(まとも)な輩(やから=人間)はいない”は、本当だったのね♡」
「おおっ!都(ミャー)ちゃんが、また、自力で喋った?!」
「結束が固まって、皆さんクチを揃えて驚いとる場面(とこ)申し訳ない…再建屋を勝手に買って出た、ノリの悪ゥ、松本則彦(まつもと のりひこ=松則:まつのり)やが…寅はん。厨房(キッチン)に獣(けもの)を持ち込むのは衛生上、マズイんとちゃうやろか?」
「ポチか?可愛いだろう…ゴキブリ計画の件で頭を悩ましているところ、ポチ(こいつ)が突然、慰めに現れてくれたんだ。『天の配剤』って言葉(やつ)だな」
「あれぇえ?厨房(キッチン)に4人そろって来た時ゃあ、毛むくじゃらな獣なんか連(つ)れてなかったはずだよなあ?」
「副料理長(あんた)は背が低いから、中年男+(たす)背の高い外人女に囲まれて入って来た元・犯罪者の手許(てもと)が見えなかったのよ♬」
「『元・犯罪者』はないだろ?丹波りん(シェフ)。
 ほら、可愛いだろ、ポチ。さあ、スタッフ(みんな)に、ご挨拶してくだちゃい。『よろぴくね~』って」
「あ~、私のアンドレちゃんだぁ♡返してよ、こんのぉ、ウサギこまし!」
「あれが、私の大事な料理本(バイブル)を齧(かじ)った極悪非道で、身の毛もよだつ毛むくじゃらな獣の正体だったのか♬」
「でもさあ、寅さん(ディレクトール)。善(い)い人演出(えんしゅつ=きどり)でウサギなんか抱えても、寅(アンタ)がしたことは犯罪だよ?
分かってんのかね?!」
「過去に囚(とら)われていては前に進めない。俺は、過去をスッパリ忘れることにした。だから、スタッフ(みんな)も、キッパリ、忘れるように。
 あッ、それと今からウサギ(コイツ)の名前は『ポチ』に換わったから。過去の源氏名は忘れるように」
「ひ、ひどいッ!従業員の慰めを慰み物にされたぁ~!♡」
「自分から発言されてるところを悪いが、都(ミャー)ちゃん。どこぞの園長センセなみの発言は、慎んでくれないかな。
ここは『新・イメージの詩』であって、『新イジーメの詩』じゃない」

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