Quantcast
Channel: 新・イメージの詩
Viewing all articles
Browse latest Browse all 3033

謎の人物④

$
0
0
「ええっ、とぉ…5年前に初めてオッキーなる疫病神(やくびょうがみ)が、この寺に来た時は…御山(おやま)で冬眠から目覚(めざ)めたばかりのツキノワグマが猪と恋に落ちて、新聞をはじめ、各媒体(ばいたい=メディア)を騒がせました」
「うむゥ…あの時は、寺(ここ)に泊まり込みで取材されるは、珍し物好きの観光客が押し寄せてくるはで、近年にない好景気に沸いて楽しかった…いやあ、往生したもんだなぁあ…なあ?欽念…じゃない!咲念」
「はい、住職様。それはもう昨年来の株式暴騰以上の…こ、コホ…失礼。
欽念(きんねん)、続きを…」
「はい。咲念(さくねん)様…その次の年―4年前ですが、『景色が気に入ったから』と、春と秋の2度も、やってまいりまして…その度(たび)に、御山の獣(けもの)どもが、異種間交配に陥(おちい)る騒ぎとなりました」
「そう言えばハクビシンとキツネの子供―アベノミクスだったかな?と、アナグマと鹿の子供―アッキーやらが話題にも上がらなかったな」
「はい…マスコミも世間も、2度目ともなりますと新鮮味が薄くなるようでして…せっかく周到に第3の矢にすべき、ミミズとマツタケの仔(ハイブリッド)まで用意したのに残念でした」
「そして3年前の夏には、未成年者の腹(おなか)にイタズラ書きをした芸人を連れて来て『修業させてやってくれ』と…」
「おう、おう!そう言えば、そん案件(あんけん=こと)もあったな…肉巻オニギリの本社が潰れて行き場を失った、とかで…」
「はい、住職。その割には美人さんを連れ込んでは懲(こ)りずに訴訟沙汰に発展し、1年ともたずに下山しくさりおって…」
「まて、咲念。芸人(あれ)は、御山へ夜逃げして、行方不明のままではなかったか?」
「はあ…そこな欽念が落ち葉焚(おちばたき)きをしている煙を、合戦(かっせん)の狼煙(のろし)と間違えて、一目散に逃げ帰って参りまして…その様子(ようす=てい)があまりにも哀れだったもので…欽念に、歩いて半日かかるバス停まで送りに行かせました」
「まことか、欽念?」
「申し訳ございません、住職様!」
「情けは他人(ひと)のためならづ、じゃ。善(よ)い行いは自らに返って来る。汝(なんじ)にフォースの御加護があらんことを…」
「ぶ、仏教徒なのに、スター・ウォーズかよ?」
 
「スター・ウォーズの第1作が公開された年じゃなかったかな…大画面に映し出される壮大な物語に集(たか)るハエどもみたいな広告屋に憧れたのが運の尽きよ…あっ、お前ら。今日から、チーム宇宙大戦争、な。格好いいだろ?名付け親(ゴッド・ファーザー)だけに、俺を崇め奉(あがめたてまつ)れよ」
「堪忍しとくなはれ、不細工様ァ!なして、そがァな間の抜けた名前を授からにゃあならンのですかいッ!」
「暴走族(おまえら)四文字熟語、大好き人間だろ?」
「あ、アホンだら~ッ!」
「プっ!…う・宇宙大戦争…?そんなチーム名じゃあ、だめだぁあ!暴走族てぇ族(やつ)ぁあ、こう“びしっ”と締まった名前じゃねぇとな…たとえば……関西なら……アホンだらぁ~ふぁみりーなんか、どうだ!何をやっても、何を云われても『アホンだら~!』と因縁つけられそうで怖い漢(おとこ)のイメージ、あるだろう?」
「暴走族にファミリーだっか…?堪忍しとくんなはれ。だァ~いたいやねぇ~、オリジナル楽曲も作れなきゃあ、CDすら製作・発売することもできヒン、どこぞの素人バンドと同じ名前、云うのンが縁起よろしゅうないがな。
 もうちッと、こう…ビシっ!っとした名前がエエんとちゃいまっか?
 ほれ、そこな成人病予備軍から立派な成人病もちへと格上げされはったプクプク大王はんも、無言で頷(うなず)いとるがね」
「だめぇ?…しょうがねぇなぁ~、メンドッチぃ…じゃぁあ…じゃあさぁ!実際に関西で活躍していた、伝説のバンドの名前を借りて。アンバ…」
「もっと、堪忍しとくんはれッ。そいだけは…アホ・バカ・カス・ナス、云われてワヤヤがな!
そがァな名前付けられた日にゃあ、分裂散会後、みんな口先男で終わってまうがねェ、絶対!
ほいだけは、絶対、いややーッ!!」
 
「いや、いや…バス停までなら寺(こっ)から歩いて3時間も下(行)けば着くところを、戒(いまし)めの意味を込めて、半日も歩かせたのがよくありませんでした。
 …なあ、欽念?」
「はい、咲念様。
 一度でも身に着いた芸事(げいごと)の垢(あか)は落とせませんでした…それどころか道中、下手な漫才のシナリオを聴かされるは、稽古(けいこ)の相手までさせられるはで…ホトホト参りました」
「それで、欽念や。近年になって、オッキーナは現れなかったのか?」
「痴呆になるには早過ぎませんか?住職様」
「弟子(小坊主)の分際で、住職()に対して、何と申した!?」
 
「ですからァあ~ッ!聴いてまっかァ~?!『私ら、“お三宮(さんのみや)ピエロ(笑い者)の黒い皇帝”云う、神戸は山本駅周辺では弱っちいことでは有名な暴走族や』云うとりまんがな!」
「いつ云った?どこで言った?何時・何分・どこの場面?関東人―とくにギターショップ潰して、ヤサグレてる副料理長(スー・シェフ)怒らしたらいかんよ」
「も、もうしわけ…ございません…私(わたくし)嘘をついておりました。
『実は、以前(いぜん=かつて)埼玉から来た、江戸っ子のくせに埼玉を根城にしているジャイアント猪場みたいな絶滅危惧種にズタ・ボコにされてもうた恨みを晴らしに、トトロの森付近を徘徊しとった』ちゅうて、何度も説明しようと思ってましたがね…エエかげん、堪忍したってェ~なァ~、エンターテェ~な~」
「おおッ!せや、せやッ。アンタはんら、『タイリョクジジイ』なる愛しのリンダちゃんの御尊父さんを捜しまわるライヴ・ハウスTOUR(ツアー)の最中に、余計な口挟んできおった、馬鹿(アホ)な子らやッ!?
 その節は、楽しませてくれて、おおきにな」
「はっはァー!こちらこそ…って、なんでやねん!

Viewing all articles
Browse latest Browse all 3033

Trending Articles